〜作品ができるまで〜

作品の構想
どのような作品を作るか構想し、どのように原型、鋳型を作るか、どんな金属を使って鋳込むか、着色はどうするかなど、計画を立てます。

原型制作
構想に沿って原型を作ります。原型の素材は、石膏・蝋・木・プラスチック・発泡スチロール・土などがありますが、原型を使わない鋳造法もあります。

鋳型制作
原型をもとにして鋳型を作る、込め型・生型・ガス型・蝋型・石膏型法。原型を用いず、作品の輪郭をかたどった板を回転させ直接鋳型を作る惣型(そうがた)法があります。鋳型には外型・中子(なかご)・笄(こうがい)、型持ち・湯道、湯口、堰(せき)といった部分で成り立っています。

鋳型焼成
鋳型が完成して金属を鋳込む前に鋳型を焼成します。蝋型の場合、脱蝋・焼成をします。

金属溶解
金属を溶かします。よく使用される金属として、銅合金・鉄・アルミニウムなどがあります。主に定置炉・可傾炉・甑炉で、コークス・ガス・重油などを燃料にして金属溶解をします。

吹き
溶けた金属を鋳型に流し込みます。溶湯の温度、鋳型の温度、鋳込みのタイミングなどは、地金、鋳型の大きさなどで違い、作品の良し悪しに大きくかかわります。

鋳ざらい
冷えて固まった金属を鋳型から取り出し、鋳型砂や中子の砂を取り除き、湯道・バリ等を切り取ります。

仕上げ加工
修理可能な欠損の場合は、鋳掛けや嵌金を施します。また、笄や型持ちの穴を埋め、やすりやたがねを用いて表面を剥いたり叩いたりして完成を目指します。

表面処理・着色
作品表面はそのままか、糠焼きをするか、素焼きをするかなど処理し、金属の特性を利用して作品を着色します。

完成
原型制作、鋳型制作、鋳込み、仕上げなどといった長い工程をかけて作品が完成します。





























鋳金用語解説集

手捻り蝋(てびねりろう) 蜜蝋と松脂を溶かし合わせた混合蝋。温めると可塑性がまし自由な表現を可能とする。
原型(げんけい) 木、石膏、蝋、土、金属、現物等で造形容易なものがよく使われる。
挽き板(ひきいた) 木の板や金属の板で作品のアウトラインを切りぬいたもの。これを直接回転させ鋳型や原型を作ったり、板を固定し、原型、鋳型を回転させて造形するためのゲージとして使用する。

鋳型(いがた) 溶かした金属を注いで鋳物の形を作るための型で、美術鋳物関係には真土型、石膏型、生型、ガス型等がある。
真土(まね) 山砂や川砂と粘土水(埴汁)を混ぜてできた土を真っ赤に焼いた物。これを鋳型土の材料として使う。鋳物砂の一種。
紙土(かみつち) 最もきめ細かい土で鋳肌部分に使う。紙の繊維を混ぜてある。
中子砂(なかごずな) 川砂・浜砂に真土を混ぜ濃い埴汁でパイプで切るように十分練った中子に使う土。
埴汁(はじる) 粘土を水で溶いたもので、鋳型の土を作るときや土と土の接着剤の役目として使う。
寄せ(よせ) 原型を鋳型から取るとき、鋳型から抜けない部分や上に抜くと肌が取れない部分がでる場合がある。その部分に小寄せ(こよせ)、中寄せ(ちゅうよせ)、大寄せ(おおよせ)という分割鋳型を作る。
中子(なかご) 鋳物に中空部分を作るため、外型の中に収める内側の鋳型。中型のこと。
笄(こうがい) 中子を外型の中に浮かせ動かないように保持させるための鉄の棒。
型持ち(かたもち) 中子と外型の隙間を維持させるためのもの。土製、金属製等がある。
巾置(はばき) 上型、下型や中子と外型のそれぞれ接合する部分。
見切り(みきり) 鋳型の分割部分。
合い印(あいじるし) 鋳型を合わせるときに上下それぞれの型をぴったり合わせるためにつける印の線。
湯口(ゆぐち) 鋳型に溶けた金属を流す入口。
湯道(ゆみち) 湯口から堰までに溶けた金属が通る道。
堰(せき) 湯道から製品になる型の隙間につながる枝分かれした湯道部分。

色見(いろみ) 真土焼型の鋳型に紙土の手前、あるいは中子が見える所に鋳型の外に通じる穴をあけ、鋳型の焼成中に窯の外から穴の中が覗けるパイプをつける。そこから鋳型の焼け具合を色で判断する。芯まで赤くなると色が入るという。
閉じる(とじる) 色見に色が入り、薪くべをやめて窯の隙間をふさぐこと。

吹き(ふき) 鋳型に溶けた金属(湯)を注ぎ込む作業。鋳込み。
湯(ゆ) 溶けた金属のこと。溶湯。
藁灰(わらばい) 藁を燃やして灰にしたもので、保温や垢取り、酸化防止の目的で坩堝の中の溶湯を覆うのに使う。
燐銅(りんどう) 銅合金溶湯の脱酸材として出湯直前に投入する。
ブロンズ(ぶろんず) 銅−錫合金で主として銅、錫、亜鉛、鉛の4元系合金。いわゆる青銅のこと。
砂張(さはり) 銅−錫合金の一種。錫の割合が高い。黄白色で硬く仕上げ加工が困難。饗銅、佐波理とも書く。
洋白(ようはく) 今日で言う白銅。銅、亜鉛、ニッケルの合金。ジャーマンシルバー。
黒味銅(くろみどう) 銅に砒素を少し混ぜた合金。煮色着色で黒くなる。
入れ干し(いれぼし) 注湯のさい、湯が足りなくて鋳物が不完全になること。
後吹き(あとぶき) 吹きがすべて終わった後、手伝ってくれた人や安全に作業できたこと、それぞれの神様に感謝し、うまく湯が流れていることを祈って酒を交わす。

鋳肌(いはだ) 鋳物の表面。
嵌金(はめがね) 鋳巣やごみを噛んだところなどに同じ金属を象嵌して修正する。
鋳掛け(いかけ) 鋳物に開いた穴や欠損の修理方法で、穴の周りに再び型を作り溶けた同金属を流しこみ穴をふさぐ。
剥き仕上(むきしあげ) 鋳肌をやすりや旋盤でぴかぴか研磨する仕上げ。
叩き仕上(たたきしあげ) 鋳型に移し取った肌を生かす仕上で、堰跡や見切り跡、鋳肌をたがねなどで叩いて仕上る。
糠焼き(みそやき) 鋳物の表面に米ぬかと硫黄の粒を混ぜたものを均一に貼り焼成させ肌を荒らさせる鋳肌処理の一種。
素焼き(すやき) 剥いた鋳物を木炭で真っ赤に焼き偶然できる焼き文様をつける鋳肌処理の一種。

鉄漿(おはぐろ) 日本酒や酢などに真っ赤に焼いた鉄をいれ長い年月熟成・発酵させた液体。
胆礬(たんぱん) 硫酸銅、酢、塩などを混ぜた液体。
煮上げ(にあげ) 緑青、硫酸銅、水か酢などを混ぜた液体を沸し、磨いた金属を液の中で煮て色をつける。

なお、これらの語句は自分が使っているもので、漢字などが正確かどうかは保障できません。(地方、地方でそれぞれあるので。)
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